使用貸借とは? 【北区で相続のご相談】
相続税申告や贈与税申告などの財産評価の際に、切っても切り離せない「使用貸借」ですが、今日は使用貸借について深く掘り下げたいと思いますので、ご一読いただけますと幸いです。
① 使用貸借の定義
使用貸借は民法593条に規定されています。
(使用貸借)
第593条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
よくあるケースとしては、下記のケースをご確認いただけるとイメージしやすいかと思います。
・親所有の不動産物件に料金を払わず子が住んでいる
・知人から車を無料で借りた
なお、法人が絡む使用貸借には必ず気を配る必要があります。
個人と違い、法人は利益を追求する前提がありますので、タダで貸すという考え方が基本的にはありません。
それゆえ、思わぬ課税関係が発生することもあります。
特に、同族会社など、会社所有の土地に社長が個人名義で建物を建築するような場合、権利金(借地権)や地代について慎重に検討を行う必要があります。
これらは、法人税課税の観点だけでなく、相続税の観点にも非常に影響してくる部分となります。
② 使用貸借の解除
使用貸借の解除は、民法593条の2に規定されています。
(借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除)
第593条の2 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
使用貸借は諾成契約なので、当事者の合意で成立します(贈与に似ていますね)。
借主が目的物を受け取っていない状態でしたら、貸主は使用貸借を解除できますが、書面による使用貸借については解除できないこととされています。
③ 借主の使用収益について
借主は使用貸借に関する目的物を使用収益できますが、一定の制限が加えられています。
(借主による使用及び収益)
第594条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
簡単に言うと、普通の使い方をして、第三者に貸す場合には貸主の承諾を得なければいけません(違反した場合は貸主は使用貸借契約を解除できる)と書いてあります。
税務的な視点からすると、使用貸借は親族間で行われることが多いと思いますので、民法594条が税務と関連する事項は少ないと考えられます。
④ 借用物の費用負担について
使用貸借にあたり、借主はどのような費用を負担する必要があるのでしょうか?
民法595条に内容が規定されています。
(借用物の費用の負担)
第595条 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
2 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
借主は、固定資産税や小規模な修繕費用を負担する必要があるということが1項に書かれています。
また、2項では必要費以外の費用を支出したときは貸主に償還させることができることが書かれています。
税務的な観点からは、例えば土地の使用貸借の場合に、固定資産税を負担している程度では賃貸借には該当しない旨が読み取れます。
賃貸借か使用貸借かどうかは判断に迷うことも少なくありませんが、少なくとも固定資産税相当額の負担のみでは賃貸借にはなりません。
また、固定資産税を少し上回る金額を支払っていたとしても、それが賃貸借に該当するというわけではありません。
このへんは、相続税申告や贈与税申告の際に財産評価に大きく関わってくるところです。
⑤ 貸主側の義務について
使用貸借における貸主側の義務については、民法596条に規定されています。
(貸主の引渡義務等)
第596条 第551条の規定は、使用貸借について準用する。
民法551条は「贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する」とされています。
つまり使用貸借の目的物について、使用貸借の目的として特定した時の状態で引き渡しを行えばよいこととされています。
⑥ 期間満了による使用貸借の終了
期間満了による使用貸借の終了は民法597条に規定されています。
(期間満了等による使用貸借の終了)
第597条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
実際問題として、親族間の使用貸借で1項・2項に該当する場合は少ないと思われます。
つまり、借主の死亡により使用貸借は終了し、使用借権は相続されません。
⑦ 解除による使用貸借の終了
使用貸借は解除によっても終了しますが、民法598条に規定されています。
(使用貸借の解除)
第598条 貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
実際問題として、2項・3項に該当することが多いかと思います。
特に何も定めていないのであれば、貸主はいつでも使用貸借を解除できます。
また、借主もいつでも使用貸借を解除することができるとされています。
⑧ 解除による使用貸借の終了
(借主による収去等)
第599条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
長い条文ですが、簡単にまとめると、次のようになります。
使用貸借終了時に借主が附属物を収去する義務を負うが、附属物を分離できなかったり分離するのに多額の費用が掛かる場合などは借主が収去義務を負わなくて良いこととされています(1項)。
また、部屋に取り付けたエアコンなど、収去して良いこととされています(2項)。
そして、借主に責任のない事由による損傷については、借主は原状回復義務を負わないとされています(3項)。
以上となります。
使用貸借の考え方は、相続税申告や贈与税申告において、土地の評価に大きく関わってくる部分ですので、使用貸借についてイメージをお持ちになれましたでしょうか?
次回は賃貸借について書く予定です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
NEW
-
query_builder 2021/01/28
-
1/25(月)11時より 無料オンラインセミナー開催【北区で相続のご相談】
query_builder 2021/01/18 -
無料相談会を開催する予定です【北区で相続のご相談】
query_builder 2021/01/01 -
賃貸借とは? 【北区で相続のご相談】
query_builder 2021/01/14 -
使用貸借とは? 【北区で相続のご相談】
query_builder 2020/12/24